ダリヤブイ。
それが、タクラマカン砂漠の奥地にあるというたった一つの村の名前だった。
その歴史は500年を越すという。
村の様子を何度も思い浮かべながら、車に乗り込み、
ケリヤ川の西を川沿いに北へと向かった。
ケリヤの町は今や近代的な建物ばかりだが、
中心からはずれていくに従って古い建物も増えていった。
春先なので、桃や杏の花がところどころに綺麗に咲いている。
おじいさんがかぶっているのは、ウイグルの中でも、ケリヤ人の男性特有の黒い帽子。
荒れた砂利道を進むと、家々が次第に無くなっていき、周りの景色が砂漠へと変わっていった。
ひたすらまっすぐな道が続く。
もう2時間以上経ったか。
対向車とは一台もすれ違っていない。
この先どれだけ行ってもその村一つしかないからだ。
ぼーっと景色を眺めていると、真新しい大きな看板が現れた。
そこには「達里雅布依郷」と書かれていた。
でもおかしい・・村までは7時間はかかるはずだ。
まさか。
この看板のダリヤブイは、今から行こうとしている本当のダリヤブイ村ではない。
今、政府が建設中の「新しい」ダリヤブイの場所を示すものだと気づいた。
先の検問所で入域許可証を見せ、進むと遠くに建設現場が見えた。
まだ村は完成していないのに、もう看板は立てているのか。
「新しい」ダリヤブイには帰りに立ち寄ることを決め、
本当の古くからあるダリヤブイ村へと先に向かうことにした。
このダリヤブイ村は大きな転機を迎えていた。
2018年5月を境に、遅くとも年末までに、長年過ごしてきたダリヤブイ村を捨てて、
「新しい」作られたダリヤブイ村か、ケリヤの町へ全員移住するよう政府から通達があったのだった。
村の様子が気になる。
しかし、まだ4〜5時間はかかる。
しかもここからは砂利道すらなく、道無き道、砂漠の中を行く。
政府はここから先には道を作らなかった。
この日は途中にあるという民家で、1泊することにしていた。
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