一軒の家が見えてきた。

周りには家畜小屋と砂漠、胡楊樹<こようじゅ>しか見えない。
一週間に1回も車が前を通らないそうだ。
この先はダリヤブイを目指しても夕暮れには間に合わない。
この家で一泊することになった。
この家はダリヤブイを含め、
タクラマカンに暮らすケリヤ人の伝統的な家屋だ。
家は多くの部分が胡楊樹で出来ている。
胡楊樹はアジアの砂漠地帯に植生する水分が非常に少ない木で、
その分硬くて丈夫であり、タクラマカンでたくさん見られる。
このダリヤブイ周辺では切り出して様々な道具の材料として使われてきた。
秋になると葉が黄金色に色づき、
とても美しい姿を見せる。
荒涼たる砂漠に悠然と立つ胡楊樹たちの強い生命力は、
大昔からここの人々の暮らしを支えてきたのだった。
中に入ると、火を焚いてナンを焼くいろりのある部屋に案内された。
こねにこねたナンの生地を直に置き、熱したタクラマカン砂漠の砂を上からかぶせて焼く。
砂の上で赤く熱を帯びているのは胡陽樹のかけらだ。

中は柔らかく、周りはかりかりしていて美味しいが、なかなかたくさんは食べられない。
タクラマカン砂漠焼きのナンを食べたあと、部屋に入って眠ることにした。
真夜中、目が覚めて外へ出てみると、そこには暗闇の中に光る星空と、無音の世界が広がっていた。